「鏡は横にひび割れて」の調べ物

私がミステリーにハマってよく読んでいたのは中高生の頃だったと思いますが、今あらためて当時の作品を読んでみると、昔だったら読み流していたところで目が止まることに気付きます。

当時の経験・知識では気にならない、もしくは、早く続きが読みたくて読み飛ばしていたところが、今になって浮き上がってきたようです。

そんなことをいくつかメモに取ってコツコツ調べ物を始めました。

以下、引用・ページ番号は全て早川書房のクリスティー文庫に拠っています。あくまでも趣味の範囲ということで原書チェックはしていません。

p.20クロフサスグリ黒スグリとも。今となってはフランス語由来の「カシス」の方がポピュラーでしょう。英語は”blackcurrant”ですが、”currant”の語源は最初に干しブドウを積み出したギリシャのコリント港。ただカシスはレーズンと何の関係もないんですが…。(見た目が似ているから?)
p.63グレタ・ガルボスウェーデン生まれのハリウッド映画女優。どんな映画に出ていたかは調べておりません。
p.101ブドウのつるはブドウのつるブドウのつるの英語は”grapevine”か。この”grapevine”には「口づてによる伝達」という意味があります。直前の会話から見ると、この意味で使われているものと思われます。この文章自体が慣用句なのかどうかは分かりませんでした。
p.111レディ・オブ・シャロットアルフレッド・テニスン(英・1809-1892)の詩より。シャロット姫は、外の世界を直接見ると死ぬという呪いをかけられていました。つまり、テニスンを知っているような”教養のある”人であれば、このミステリーの結末がある程度想像できたりするのです(厳密に言えば犯人が分かるわけではない)。ただ、そういう事前情報があったとしてもこの本は面白いし、むしろ作者の意図はそこにあったのではないかなという気もします。これ以後このお話はホワイダニット(Why done it)小説となり、「なぜ犯行を行ったのか」を追いかけることになります。
p.149アデノイド扁桃が晴れて睡眠障害や記憶力減退などを起こす病気。子どもに多い。
p.237枯草熱「かれくさねつ」と思いきや、こちら「こそうねつ」と読むそうです。”hay fever”の翻訳なら「干し草熱」になるところなので、単純な訳語ではないのかもしれません。執筆時点(1962年発表)で花粉症がアレルギーによるものであることが、普通に知られていた知識であったことに感心しました。
p.258オセロの任務もこれで終わったわけだしシェークスピア「オセロ」からの引用と思われますが、分かりません。今は時間がないので、枠取りだけしておいて、将来「オセロ」を読むときの宿題にしておきます。
p.266海底電信(紙)当時、既に海底ケーブルが張り巡らせられていて、海を越えた電報の授受が行われていたことを意味します。ここではクラドック警部が、アメリカから何らかの情報を受け取ったことを表しています。実は海底ケーブルが敷かれたは思いのほか早く、イギリス〜フランス間(ドーバー海峡)に海底ケーブルが設置されたのは1851年、続いてイギリス〜アメリカ間(大西洋横断ケーブル)が1866年。いずれも明治になるより前です。日本はよく植民地にならなかったと思います。
p.284毒人参(ヘムロック)古来ヨーロッパで毒薬に用いられ、ソクラテスもこれを飲んで死んだといわれています。
p.286オーガンディー(の服)organdy 又は organdie(後者は主に英国のスペル)手触りが堅く目の細かい薄い綿布。ブラウス・カーテン・装飾用。フランス語由来ですがその先の語源不明。
p.417風疹風疹は”rubella” 又は “German measles”と表記されます。ややこしいのは”measles”単独だと、「はしか」という意味と「発疹性疾病の総称」という二つの意味があること。日本語だと「風疹」と「はしか」は全く違う名称があてがわれていますが、英語の場合の曖昧さがこのミステリーでも生かされています。

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